BATES by WHALE 第1回 [シートパン]

VINTAGE BATES シリーズ
この記事を書いた人
Hiroki Kataoka

WHALE & Co.デザイナー / ビンテージシートの研究者 / グラスサイン アーティスト / 株式会社グラスサイン代表取締役
愛車は 1955 FLH, 1980 FXWG, 1987 FXR, 2005 XB12S, 2007 FXD
1日25時間バイクの事を考えているバカ野郎である。
本業は日本人初のグラスサインアーティストであり、ビンテージ タイポグラフ デザインの専門家であるが、カスタム好きが講じて何故かシートメーカーを立ち上げてしまう。。。

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写真は世界一こだわり抜いて製作したWhale & Co.製の60sベイツスタイルのソロシート、8.5インチシートパン、2インチ厚サイズのソロシート&ピリオンパッドです。

今となっては大変に高価なオリジナルの当時物のBATESソロシート&Pパッドを解体し、ディテールを研究し尽くし、世界一のクオリティで60年代スタイルのソロシートを復活させました。

このビンテージベイツの研究と製作においては、アメリカはバージニア州のRiver seat companyと我々Whale & Co.をよりもディテールを追求しているシートメーカーは世界中探しても無いと考えています。

日本国内ではジミードープさんのベイツレプリカシートもクオリティが高いと思います。

現行でBATES社が復刻のソロシートを製作していますが、当時の物とは少しディテールが異なります

このクラシカルで美しい究極形の 60sトラディション・シートは非常に見どころが多く、何部作になるか分かりませんが詳しく解説しますので、是非とも全てお読み頂き60sベイツマニアになってください!

第1回はシートパン(シートベース)についてです。

プレスによる造形

本物を追い求めるWhale & Co.ではかなり細かくプレス型を突き詰め、約2年の歳月をかけ完璧なシートパンを制作することに成功しました。

当時物オリジナルのベイツソロシートはプレス成形によってシートパンの造形を行なっているのですが、これは非常に困難なパートです。

まずここで多くのレプリカ製作メーカーがつまずき妥協するポイントです。

簡素化され、単に鉄板を曲げただけの物や、全く違う形状のプレスになっている事がほとんどです。

何故かと申しますと、当時と同形状のマスターを制作するのが難しいのはもちろんですが、そもそもプレス型の製作に非常にお金がかかり、このニッチなマーケットでは採算を合わせるのが難しいからです。

プレス成形とはこのように油圧プレス機で型にセットした材料を圧縮することで造形することです。

ベイツソロシートのプレス型の大きさですと、クオリティによりますが製作には100~200万円ほどかかります。

なぜこんなに高いかと言いますと、

造形物(マスター)の製作

マスターを3Dスキャン

3Dデータの製作

プレス型の製作

プレス試作

プレス型の調整

と、このようにそれぞれのセクションで専門の技術を必要とする上、試作で上手くいかない場合は再度プレス型の作り直しをしなければならない事もあります。

3Dデータでは完璧な形で、ある程度の予測をしながら型を製作するのですが、プレスした時に鉄板がどう動くかどの方向に圧縮されるか等、どのように成形されるかは実際に型を製作してプレスをかけてみなければ分からないからです。

今回のプレス型の製作で我々も2回やり直しをしています。(ボツになった型代も当然支払わなくてはなりません。。。)

そして何度も微調整を重ねてようやく造形が完成します。

これは単なるビジネスではなく、圧倒的に良いものを作りたいという情熱がなければ出来ないと考えています。

60sトラディション・シート

シートパン サポート

ご存知の通りベイツソロシートの真ん中にはフラットバーの支え(サポート)が取り付けられているのですが、こちらも当時と全く同じ寸法、厚み、素材、曲げ角度で制作しています。

前方の曲げ加工はボルトが通る長穴の先端を支点に曲げ加工が入ります。

後方はカクッと折れるのではなく、丸みをおびたアールの形です。

後方エンド部分のカット形状も四角ではなく、アールなっています。※写真右側のビンテージは擦り減ってしまっていますが、元は左の写真の形状です。

溶接は当時は荒い半自動ですが、Whale& Co.では強度を上げるためにアルゴン溶接アップデートしています。(多くのビンテージベイツの溶接が長年の使用により割れてしまっているからです。)

もちろん1つ1つを熟練の職人がハンドメイドで製作しています。

Whale & Co.は “Gonna be vintage“. 50年後、100年後の後世に残るもの作りをコンセプトに製作をしていますので、耐久性に抜かりはありません。

スプリングのマウント ボルト

非常に細かいポイントですが、当時物はシートパンに沿ってボルトを取り付けているのではなく、スプリングがフレームに対して垂直に当たるよう考慮されて、シートパンに対して斜めに取り付けられています。

よくスプリングが後ろの方向に伸びてしまっていて、無理やり前側に引っ張ってフレームにマウントしている車両を見かけないでしょうか?

ベイツby Whaleはそのような事にはならず、オリジナルのようにジャストフィットする形状で製作しています。

このディテールを再現しているのはおそらくWhale & Co.だけかと思われます。

表面仕上げ

さて、表面の処理ですが、写真左の70年代14.5’のシートパンはブラックの塗装ですが、60年代の物は亜鉛メッキ仕上げですので、Whale & Co.では亜鉛メッキを採用しています。

 ※オリジナルの表面仕上げは生産時期により異なると思われます。

このようにシートパン1つをとっても非常に手間とコストがかかっており、一般的なレプリカ製品とは一線を画す最上の仕上がりになっている事がお分かりいただけるかと思います。

左から→ベイツ再生産品 8.5’→ベイツ by Whale 8.5’→60sベイツ 10.5′

初期の再生産品のシートベースは叩きの板金加工ですので、おそらくこの頃は当時のプレス型が残っておらず、叩いていたのではないかと推測されます。(これはこれで価値が出るかもしれません。)

誤解のないよう申し上げますと再生産品は紛れもない本物であり、現存するBATES社にオーダーする事ができる尊いプロダクトである事は間違いありません。

実際に私もビンテージBATESと再生産品も同数所有しており、どちらの良さもあると考えております。

ですがやはり再生産品は細かいディテールは当時物とは異なることも事実ですので、新品で当時物の雰囲気をお求めの場合はWhale & Co. 60sトラディション・シートがベストチョイスかと思います。

それでは次回もお楽しみに!

最後までご覧いただきありがとうございました。